ワイナリー通信

葡萄の花

葡萄の花 葡萄畑に色とりどりの花咲く春! ところで葡萄の花は何色でしょうか? 白? 黄色? ピンク? いやいや葡萄の花は咲かない? 

 ずいぶんと昔のことです。ラジオの「こども電話相談室」で、「花の色の中で一番多いのは緑色」と教えてもらいました。花が咲かないと思われているような植物は、みんな葉っぱや茎と同じような緑色の花を咲かせるのだと。植物の生存と繁殖を担う器官でもある花は、虫に花粉を運んでもらう植物は目に付きやすい花を付け(虫媒花)、風に花粉を運んでもらう植物は地味な花(風媒花)が多いというようなことも聞きました。現在も、植物学の世界では花の色についてさまざまな研究がなされているようですから、ここでは葡萄の花についてのみお話しましょう。
 写真のように、葡萄の花は白薄緑。バラの花が咲く頃、葡萄はひっそりと目立たずに花を咲かせます。人が見ていてもいなくても、葡萄は静かに花を咲かせ葡萄畑には葡萄の花独特の香りが漂います。

 ワインづくりのカレンダーでは、葡萄の花が咲いて100日目が葡萄の収穫のときと言われています。ココワインの葡萄は、場所によって、またその年の気候や葡萄品種によって収穫期は異なり、8月中旬から11月まで、葡萄の開花から70日から150日で収穫といったところでしょうか。ココ・ファーム・ワイナリーでは、ヴィンヤードサンプルを細かく採取しながら、全体の味のバランスを見て、葡萄が「とってね」という時期をとらえて収穫します。葡萄は醸造場に運ばれ、野生酵母(葡萄の果皮についた自然の酵母)によって醗酵しワインになります。そして、葡萄畑でひっそりと目立たぬ花を咲かせた葡萄は、食卓でワイングラスに注がれて、それぞれに香り豊かで美しい花を咲かせてくれます。

マタヤローネ

ヴィンヤードスタッフ2009年初夏、ココ・ファーム・ワイナリーに新しいデザートワインができました。
2004年と2005年の晩秋、佐野市赤見の葡萄畑で遅摘みされたマスカット・ベイリーAの葡萄からつくった「マタヤローネ」です。収穫の年に葡萄を一粒一粒、ハサミで軸から取り外し、それをエビラ(箙)に並べて天日で乾燥させ、さらにエビラごと干椎茸用の乾燥機に入れて乾燥させました。乾燥により葡萄の甘さは20°Brixから30°~50°Brixまで凝縮。さらに葡萄を搾っても得られる果汁はほんのわずか。もとの果汁の5分の1以下でした。しかも糖度が高いため、普通のワインが醗酵にかかる時間は約2週間ですが、このデザートワインは6ヶ月間もじっくり醗酵を続け、その後の熟成期間44~56ヶ月とあわせると、なんと収穫から4~5年かかってようやくビン詰されました。
膨大な手間と時間をかけてつくったこのデザートワインですが、名前はあっという間に決まりました。仕事を終えた夕方、醸造責任者が「今日のビン詰めはこれで終わり。お疲れさまでした」と言うと、すかさず「また、やろうね!」という園生の声。写真のなかで醸造責任者と同じ口のあけ方をしているビン詰めが大好きなW君がこのワインの名づけ親です。イタリア・ヴェネト地方を中心に葡萄を干してつくる、長命なデザートワインRecioto della Valpolicella Amarone(レチョート・デッラ・ヴァルポリチェッラ・アマローネ)に敬意を表して、MataYaronne(マタヤローネ)はできました。
少しずつしかできないので、何年もお待たせすることがございますが、「またやろうね」とチャレンジしていますので、どうぞよろしくお願いします。(写真は2010年秋撮影) 
 

ジュラ紀の石

ココ・ファーム・カフェのすがすがしさは、吹き渡る風。
でも時には強い風が吹くため、白いパラソルの土台には葡萄畑の石が置いてあります。
足利と佐野の葡萄畑は、ともに山の南西斜面を開墾した畑。
夏の西陽をうけやすいだけでなく、畑の土壌も素晴らしい特徴をもっています。
葡萄畑の礫(こいし)混じりの20cm~100㎝ある壌土の下は、
砕屑岩(さいせつがん)類、チャート、玄武岩(げんぶがん)、メランジ (melange)などで構成された頁岩(けつがん:shale)からできていて、これらの岩石は、なんと、ジュラ紀に海溝の底に溜まった岩石が地殻変動により押し上げられて形成されたもの。
古代の貝殻の化石を見つけることもできます。
また、特殊な層となった母岩は、水はけがよいと同時に、葡萄の根が深く入り込むことができる、まさにココのテロワール。ココから生まれるワインに、他にはない、しなやかな奥行きを感じさせてくれます。
ジュラ紀の石と、どうぞごゆっくり。

十本の桜

ココの桜一昔前のある早春のこと。
十本の桜の木を乗せたトラックと植木屋さんがココ・ファーム・ワイナリーにやってきました。
ワイナリーの地下セラーでお世話になった仮枠(かりわく)大工のみっちゃんが、桜の木をプレゼントしてくださったのです。葡萄畑の中腹に5本、葡萄畑の麓に5本。互いに呼応するように、またこころみ学園の園生たちがどこにいても桜を楽しめるように、その桜は植えられました。
「桜はみんなで観られるからなぁ」そういうみっちゃんは、この桜を一度だけ観て帰らぬ人になりました。
春ごとに見事な花を咲かせるみっちゃんの桜。
生前、彼は腕のいい仮枠大工でした。ご存じのように、コンクリートの仮枠は、コンクリートを流し込んでコンクリートが固まるとその役割を終えます。決して表に出ることのない仮枠。そういうものに宿るつつましさ、奥ゆかしさ。
みっちゃんの桜をはじめとして、ココの桜は、名もなき(自分の名前さえ書けない)人たちのワインづくりにエールを送るように、今年もみんなを楽しませてくれます。

カフェでロゼワインとランチボックスをテイクアウトして、葡萄畑のお花見はいかがでしょう?
あたたかくしてお出かけくださいね。

新酒の季節

いよいよ収穫と仕込みの最盛期を迎え葡萄畑は大忙しです。
急な斜面を登り降りして、こころみ学園の園生総出で収穫。
その後こころみ学園では仕込みの前に徹底した選果を行います。
収穫した葡萄をもう一度丹念に点検し、痛んだ粒を取り除いて、
一房一房どころか、葡萄の粒の一粒一粒を選ぶのです。
そんな風にして仕込んだ葡萄は、まさにこころみ学園ならではの味わい。
11月の第3日曜日とその前日の土曜日には収穫祭が開かれ、
素敵な音楽やおいしい料理といっしょに、
猛暑の日も、厳冬の日もみんなでがんばって育てたワインを楽しみます。
1984年から始まったこころみ学園の収穫祭、
おかげさまで、たくさんのお客様でにぎわうようになりました。
でも混雑は苦手という方は、ぜひ収穫祭以外の日にお出かけください。
できたてのヌーボー(新酒)とランチボックスをテイクアウトして、
奥の池の畔で、葡萄畑の頂上で、楽しいひとときをお過ごしください。
ココ・ファームのヌーボー「のぼっこ」は11月3日発売です。